微分積分学基礎 No.1要約

今日のテーマ:実数

関数の概念:

定義 1.1   集合 $ X$ 上の実数値関数$ f$ とは、 $ X$ の各元 $ x$ に対して、その値 $ f(x)$ が (誰がやっても正しくやる限りはただひとつ)定まっている時に いう。

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「ある時刻での気圧」は平面の領域上の関数とみなせる。

→多変数関数や関数列を扱う必要が生じる。

ただし、まずは 数列や、一変数関数を扱うのが基本になる。

定義 1.2   以下この講義では次のような記号を用いる。
  1. $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ : 整数全体のなす集合。

  2. $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ : 有理数全体のなす集合。

  3. $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ : 実数全体のなす集合。

  4. $ {\mathbb{C}}$ : 複素数全体のなす集合。

◎集合と、その元との区別が大事。 「実数の集合を一つ考える。」というのと、「実数を一つ考える。」というのを よく意識して区別すること。

定理 1.3   次の不等式が成り立つ。
  1. $ x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ に対して、 % latex2html id marker 996
$ -\vert x\vert \leq x \leq \vert x\vert $.
  2. (三角不等式) $ x,y\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ に対して、 % latex2html id marker 1001
$ \vert x+y\vert \leq \vert x\vert+\vert y\vert.
$

定義 1.4   実数 $ a,b$ について、閉区間 $ [a,b]$ と開区間 $ (a,b)$ を つぎの式で定める。

$\displaystyle [a,b]$ $\displaystyle =\{x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1016
$\displaystyle \vert a\leq x \leq b\}$    
$\displaystyle (a,b)$ $\displaystyle =\{x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle \vert a < x < b\}$    

以下、この講義では、 整数、有理数、実数の、和、差、積、商、等号、不等号。を 自由に用いる。 その他、実数の完備性というのも用いるのであるが、それについては次回以降。

数列

定義 1.5   $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}_{>0}$ 上の関数を数列という。数列のことを $ a_1,a_2,\dots,a_n,\dots$ と書いたり、 $ \{a_n\}_{n=1}^\infty$ と書いたりする。

単に数列と言ったときには、有限数列は考えない。 他方で、「(添字が)0 から始まる数列」なども場合によっては考えることがあるが、 それについては臨機応変に。

◎有界

定義 1.6  
  1. $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ の部分集合 $ S$有界であるとは、 ある実数 $ M_1,M_2$ があって、どのような $ x\in S$ に対しても % latex2html id marker 1047
$ M_1\leq x \leq M_2$ を満たすときに言う。
  2. 実数列 $ \{a_n\}$有界であるとは、 それを $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ の部分集合と見て有界であるときに言う。
  3. 集合 $ X$ 上の関数 $ f$有界であるとは、値集合 $ \{f(x)\}_{x\in X}$ が有界であるときにいう。

(2) は (3)の特別の場合とも見ることができる。(3)については次回以降に解説する。

◎極限

定義 1.7   数列 $ \{a_n\}$ は、ある実数 $ a$ にたいして、

$\displaystyle \forall \epsilon>0 \exists N$    such that $\displaystyle (n>N\implies \vert a_n -a\vert<\epsilon
$

をみたすとき、$ a$収束する という。 $ \{a_n\}$$ a$ に収束するとき、 その収束する先 $ a$ は一つに定まる。そこで この値のことを $ \{a_n\}$ $ n\to \infty $ のときの極限とよび、

$\displaystyle \lim_{n\to \infty } a_n
$

と表す。

命題 1.8   $ \{a_n\}$$ \{b_n\}$ とが収束すると仮定する。このとき、
  1. $\displaystyle \lim_{n\to \infty } (a_n+b_n)=
\lim_{n\to \infty } a_n
+\lim_{n\to \infty } b_n
$

  2. $\displaystyle \lim_{n\to \infty } (a_n-b_n)=
\lim_{n\to \infty } a_n
-\lim_{n\to \infty } b_n
$

  3. $\displaystyle \lim_{n\to \infty } (a_n b_n)=
\lim_{n\to \infty } a_n
\lim_{n\to \infty } b_n
$

  4. さらに % latex2html id marker 1100
$ \lim_n b_n \neq 0$ を仮定すると、 有限個の例外を除いて % latex2html id marker 1102
$ b_n\neq 0$ で、

    $\displaystyle \lim_{n\to \infty } (a_n/ b_n)=
\lim_{n\to \infty } a_n
/\lim_{n\to \infty } b_n
$